医学的な研究や、心停止などから蘇生した人たちの「臨死体験」の報告によると、死を迎える瞬間は、恐怖や苦痛よりも「非常に穏やかで、深い眠りに落ちていくような感覚」であると考えられています。
完全に亡くなった状態から戻ってきた人はいないため断言はできませんが、脳科学や終末期医療の観点から、死の瞬間に向けて以下のようなプロセスや感覚が起きることが分かっています。
脳内物質による痛みの軽減と多幸感
体が生命の危機を迎えると、脳は苦痛を和らげるために強力な鎮痛作用を持つ「エンドルフィン」などの神経伝達物質を大量に分泌します。これにより、死の直前には身体的な痛みや恐怖から解放され、フワフワとした心地よさや多幸感に包まれると言われています。
意識がフェードアウトする感覚
心臓の働きが弱まり、脳へ送られる酸素が減少していくと、意識は徐々に薄れていきます。全身麻酔をかけられる時や、夜にとても深い眠りに落ちていく時のように、もがいたり苦しんだりすることなく、ゆっくりとスイッチが切れていく自然なプロセスです。
臨死体験で共通して語られるもの
生死の境をさまよって回復した人たちの多くは、文化や宗教を問わず似たような感覚を世界中で報告しています。
- 圧倒的な安心感と平和な気持ち(痛みや不安が全くない状態)
- 体からフワッと抜け出す感覚(痛みのある肉体から離れ、自分を客観的に見下ろしている感覚)
- 走馬灯(これまでの人生の記憶が瞬時に、かつ鮮明にフラッシュバックする)
- 暗い場所を抜け、暖かくまばゆい光に包まれる感覚
終末期医療の現場から
緩和ケアやホスピスの医師・看護師など、日々看取りを行っている専門家の多くも、「人が亡くなる瞬間は驚くほど穏やかである」と証言しています。体が自ら死への準備を整えるため、呼吸がゆっくりになり、最期はろうそくの火がスッと消えるように静かに息を引き取ることが大半です。
私たちが想像する「死への恐怖」は生きているからこそ感じるものであり、実際の死の瞬間そのものは、脳と体の自然な仕組みによって守られた、安らかなプロセスであるというのが現在の医療や科学における有力な見解です。